不動産価値はどうなる?「水害」激甚化と自然災害リスクの現実
2025年9月12日に発生した記録的な豪雨により、各地で浸水被害が多数報告されました。皆さんも肌で感じている通り、水害は近年多発・激甚化しており、地球温暖化により今後も続くと予測されています。
自然災害と不動産の相関は極めて強く、今後は担保評価や保険料の面から災害リスクが高いエリアの不動産価格が下落する可能性があります。
水害リスクの増大と不動産市場の変化
近年は気候変動の影響で水害リスクが増し、不動産を取り巻く制度・保険・購入者意識に大きな変化が見られています。
重要事項説明時の水害リスク説明が義務化
2020年の宅建業法施行規則改正により、不動産会社は重要事項説明時にハザードマップを用いた水害リスク説明が義務化されました。現在では、水害リスクが不動産購入の重要な判断基準となっています。
水災に関する保険料率をリスクに応じて細分化
2024年には火災保険の参考純率引き上げに加え、水災補償の保険料がリスク別に細分化。結果として、高リスク地域の保険料は大幅に上昇しています。
不動産購入時に災害リスクを重視する人は7割超
いえらぶCLOUDの調査(2025年9月)によれば、75.4%の人が「災害リスク(水害ハザードマップ)」を重視すると回答しました。(n=不動産会社186名・エンドユーザー1,325名)
立地や価格に加え、安心して暮らせるかどうかが注目される時代です。
災害リスクが担保評価に影響する未来
現時点では、金融機関が融資審査の際に行う「担保評価」に、自然災害リスクが直接大きな影響を与えているわけではありません。しかしながら、災害リスクはすでに保険料へ確実に反映されており、今後さらに人口減少と住宅余りが進むことは避けられないと考えられます。
そうなれば、災害リスクの高いエリアでは需要が低下し、地価や不動産価格を維持するのが難しくなるのは明白です。その結果、金融機関が担保評価を行う際に、災害リスクを考慮する流れが訪れるのも時間の問題といえるでしょう。担保評価が下がれば融資が受けにくくなり、購入希望者も限られ、結果的にリスクの高い地域の不動産価値はさらに下落する可能性があります。
内水氾濫という新たな脅威
水害と聞くと多くの人は「洪水(外水氾濫)」を思い浮かべるかもしれません。ですが、近年特に増えているのは「内水氾濫」による被害です。内水氾濫とは、短時間の豪雨で排水能力を超えてしまったり、合流先の河川水位が上昇して排水できなくなったりすることで発生する浸水被害を指します。
この内水氾濫は水辺に限らず都市部でも発生し、実際に令和元年の台風では武蔵小杉が浸水。さらに2025年9月の記録的豪雨では武蔵小杉や自由が丘が浸水しました。加えて、三重県四日市市では地下駐車場の浸水がメディアで大きく取り上げられています。
まずは災害リスクの把握を
価格下落以上に大切なのは安心・安全な暮らしです。「我が家は大丈夫」と過信せず、ハザードマップで自宅周辺のリスクを確認しましょう。場合によっては、防災リフォーム・保険の見直し・住み替えも検討することをおすすめします。